5. 比喩で表す怒りの表現
「雷を落とす」「怒涛のごとく」「火のように怒る」といった比喩的な表現は、怒りの強さや迫力を生き生きと描写します。文学やスピーチで使われることが多く、感情を直接伝えるだけでなく、印象的で想像しやすい表現として親しまれています。
- 雷を落とす(かみなりをおとす)
大声で叱ること。怒りの勢いを雷にたとえた表現。特に上司や親が使う場面で多い。 - 火を噴く(ひをふく)
激しい怒りを表す。言葉や表情に熱がこもる様子を示す。 - 烈火のごとく怒る(れっかのごとくおこる)
炎のように燃え上がる怒り。感情の激しさを強調する定型句。 - 怒涛のごとく(どとうのごとく)
押し寄せる波のように、止められない感情の勢いを示す。 - 頭から湯気が出る(あたまからゆげがでる)
怒りで頭に血が上る様子をユーモラスに表す日常的な言い回し。 - 怒りが煮えくり返る(いかりがにえくりかえる)
怒りが体の中で沸き立つような状態。強い不満や屈辱を感じるときに使う。 - 火がつく(ひがつく)
ちょっとしたきっかけで怒りが燃え上がること。感情の引き金を表す。 - 腹の虫が治まらない(はらのむしがおさまらない)
どうしても怒りや不満が消えず、気持ちが落ち着かないこと。 - 堪忍袋の緒が切れる(かんにんぶくろのおがきれる)
我慢の限界に達し、ついに怒りを爆発させること。 - 怒りが爆発する(いかりがばくはつする)
抑えていた感情が一気にあふれ出す様子。現代的で広く使われる表現。 - カッとなる
一瞬で怒りに火がつくこと。感情が急に燃え上がるイメージ。 - 目が吊り上がる(めがつりあがる)
怒りで表情が険しくなる様子。見た目の変化を通じた比喩。 - 怒気を発する(どきをはっする)
怒りの気配を全身から放つこと。静かでも強い感情を感じさせる。 - 怒りの炎に包まれる(いかりのほのおにつつまれる)
怒りが体中を支配するような強烈な表現。文学的で印象的。 - 目に火花を散らす(めにはなをちらす)
激しく怒り、感情が衝突する様子。対立や対決の場面に使われる。 - 息巻く(いきまく)
興奮して怒りをあらわにすること。勢いづいて強気になる様子。 - 血相を変える(けっそうをかえる)
驚きや怒りで顔つきが変わること。感情の激しさを伝える定番の表現。
6. 古語・文語的な怒りの言葉
「忿懣(ふんまん)」「瞋恚(しんい)」など、古典や仏教用語に見られる怒りの表現もあります。言葉の背景を知ることで、文化や思想に根差した怒りの理解が深まります。
- 忿怒(ふんぬ)
仏教で「瞋恚(しんい)」と並ぶ強い怒りの心。悪を滅ぼす力としての神聖な怒りを指すこともある。 - 瞋恚(しんい)
仏教用語で、三毒の一つ「貪・瞋・痴(とん・じん・ち)」の「瞋」。他者や状況に対する怒りや憎しみの心を意味する。 - 憤懣(ふんまん)
怒りや不満が心にたまっている状態。古典文学でも頻出する言葉。 - 忿懣(ふんまん)
上と同義の旧字体表記。「忿」は「怒り」「腹立ち」を意味する漢字。 - 義憤(ぎふん)
道理に反することや不正に対して抱く正義感からの怒り。理性的かつ道徳的な憤りを表す。 - 慍色(おんしょく)
怒った表情。古文書や漢詩で、顔に怒りの色を浮かべることを指す。 - 怒気(どき)
怒りの気配、または怒りの気を含んだ雰囲気。文語や漢詩に使われる格式高い表現。 - 憤激(ふんげき)
内心の怒りが激しく湧き上がること。文語調で、冷静な怒りにも使われる。 - 怒号(どごう)
大声で叫ぶこと。漢詩では戦場や争いの場面で怒りの声として用いられる。 - 憤怨(ふんえん)
深い恨みや怒りの感情。古代中国や日本の史書にも見られる表現。 - 怨怒(えんど)
恨みと怒りが混じった感情。仏教的な文脈では、煩悩のひとつとされる。 - 激憤(げきふん)
非常に強い怒り。現代でも政治・報道文脈で使われるが、語源は文語的。 - 瞋(いか)る
「怒る」の古語。「瞋(いか)り給ふ」などの形で神仏の怒りを表す。 - 忿発(ふんぱつ)
怒りが湧き起こること。漢籍や古典文献に見られる。 - 憤り(いきどおり)
理不尽に対して強く不満を感じる心。文語的で荘重な印象を与える。 - 怒気を帯びる(どきをおびる)
表情や声に怒りの気配が宿ること。古文調の叙述でよく使われる。
7. 身体的な反応を伴う怒りの言葉
「血が上る」「顔を真っ赤にする」「怒髪天を衝く」など、怒りによる身体的な変化を描写する表現も数多くあります。
- 顔を真っ赤にする
怒りや恥ずかしさで血が上り、顔色が赤くなる様子。強い感情の表出。 - 血が上る(ちがのぼる)
興奮や怒りで頭に血が集まり、冷静さを失うこと。 - 怒髪天を衝く(どはつてんをつく)
怒りで髪が逆立つほどの勢い。激しい怒りを誇張して表す慣用句。 - 歯ぎしりする(はぎしりする)
怒りや悔しさで歯をかみしめ、きしませること。 - 拳を握りしめる(こぶしをにぎりしめる)
怒りや悔しさをこらえながら、拳を固く握る仕草。 - 肩を怒らせる(かたをいからせる)
怒りで体を大きく見せようとし、肩を張る様子。威圧的な印象を与える。 - 眉を吊り上げる(まゆをつりあげる)
怒ったときに眉が上向きになる表情。感情を顔で示す典型的な動き。 - 目を吊り上げる(めをつりあげる)
強い怒りや非難の感情を、鋭い目つきで表すこと。 - 顔をしかめる
怒り・不満・不快感を表情で示すこと。控えめな怒りの表出。 - 目を見開く(めをみひらく)
怒りや驚きで目を大きく開けること。感情の高まりを示す仕草。 - 鼻息を荒くする(はないきをあらくする)
怒りや興奮で呼吸が荒くなること。勢いのある描写。 - 体を震わせる
怒りや緊張で体が震える様子。感情の強さを身体的に表現する言葉。 - 息を荒げる(いきをあらげる)
感情の高ぶりにより、呼吸が荒くなること。 - 手が震える(てがふるえる)
怒りや緊張をこらえきれず、体が反応している状態。 - 唇をかむ(くちびるをかむ)
怒りや悔しさを押し殺して我慢する行為。感情を内に秘めるときの仕草。 - 目つきを鋭くする
相手をにらみつけるような怒りの視線。感情を直接伝える非言語的表現。 - 舌打ちする(したうちする)
不満や苛立ちを音で表す行為。軽い怒りや呆れにも使われる。 - 拳を振り上げる
怒りの勢いで腕を上げる仕草。暴力に至る直前の行動を示す。 - 顔をそむける
怒りや失望で相手を見たくない気持ちを態度で表すこと。 - 足を踏み鳴らす
怒りを体で発散する動作。感情が頂点に達しているときの表現。
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