世界には、森に棲む妖精、水辺に現れる精霊、家を守る小さな存在、夜の道で人を惑わす不思議なものまで、さまざまな妖精伝承が残されています。
アイルランドやスコットランドの妖精はもちろん、日本の木霊や座敷童子、北欧の家霊、南米やアジアに伝わる自然霊まで目を向けると、「妖精」という言葉の中には驚くほど幅広い存在が含まれていることに気づきます。
妖精の名前一覧を探していると、かわいらしい存在ばかりを想像しがちですが、実際の伝承では、幸運を授けるもの、家や森を守るもの、誘惑や死の気配を運ぶものなど、その性質は地域ごとに大きく異なります。各国の妖精伝承をたどっていくと、人々が自然をどう恐れ、どう敬い、どんな願いを託してきたのかまで見えてきます。
このページでは、世界の妖精一覧として、ヨーロッパ、アジア、日本、アメリカ、オセアニアなど各地に伝わる妖精的存在を幅広く紹介しています。名前だけではわかりにくい背景や特徴もあわせて見ていくことで、物語づくりや創作のヒントとしても、伝承の読み物としても楽しめる内容になっています。
世界の妖精の名前一覧

- アジザ|Aziza
ベナン(旧ダホメー)を中心とする西アフリカのフォン族・エウェ族の伝承に登場する森の妖精的存在。森や大木、蟻塚の近くに棲むとされ、狩人に幸運や魔法を授け、人間へ実用的な知識や霊的な知恵を伝える善良な精霊として語られます。 - ユンボ|Yumboes
セネガルのウォロフ系伝承に登場する小さな超自然的存在。白く美しい姿で描かれることが多く、「良き人々」とも呼ばれます。夜に月明かりの下で踊り、地下や丘の下の世界に住む妖精たちとして伝えられています。 - ディワタ|Diwata
フィリピン神話・民間信仰における自然霊・精霊・神格的存在の総称。地域や時代によって意味の幅は広いものの、現代では「妖精」「ニンフ」「自然の精」と訳されることも多く、山・森・水辺などに宿る美しい霊的存在として知られます。 - フーリ・ジン|Huli jing
中国神話・民間伝承の狐の精霊。長い修行を経て人間に化ける力を得るとされ、美しい女性や神秘的な存在として現れることがあります。善悪の両面を持つ妖狐で、日本の妖狐や朝鮮半島・ベトナムの狐霊伝承にも影響を与えました。 - 木霊|Kodama
日本の伝承に登場する樹木の精霊。古木や霊木に宿る存在とされ、山中の反響音を木霊の声と見る考えもあります。人に災いを与えることもあれば、神聖な森を守る霊として畏れ敬われることもあります。 - パリパリ|Pari-pari
マレー世界の民間伝承に見られる妖精の呼称。マレー語圏では fairy に相当する語として使われ、森や自然と結びついた小さな霊的存在として語られます。地域によっては助け手として、また神秘的な自然霊として理解されます。 - ペリ|Peri
ペルシャ起源の伝承に登場する、美しく翼を持つこともある妖精的存在。古い層では悪しき霊に近い面もありましたが、後代には善性を帯びた優美な存在として語られるようになりました。中東から南アジアにかけて広く知られています。 - ティエン|Tiên
ベトナム伝承における仙人・仙女・不死の存在。厳密には「妖精」より「仙」「天界の不老の者」に近い語ですが、日本語では妖精的・天女的な存在として紹介されることがあります。美しさ、長寿、超自然的力を備えた存在として描かれます。 - ヤクシャ|Yaksha
インド神話・仏教・ジャイナ教に現れる自然霊。樹木、水、豊穣、財宝、山野などと結びつき、守護霊としての側面と、人を惑わす恐ろしい側面の両方を持ちます。妖精・精霊・守護神の中間のような存在です。 - アンガーネ|Anguane
北イタリア、特にアルプス周辺やラディン系の伝承に登場する水の妖精。湖や泉、水辺に住むとされ、美しい女性の姿で現れる一方、異形の特徴を持つとも語られます。誘惑者でもあり、豊穣や女性性と結びつくこともあります。 - アルベリヒ|Alberich
ゲルマン伝承に登場する小人・妖精王的存在。後のオーベロン伝承と語源的につながる名で、元来は「エルフの支配者」のような意味を持つと考えられています。英雄伝説では小人王・地下の民の王として現れます。 - アルプ|Alp
ドイツ民間伝承に現れる夜の霊。語源的には elf と同系統ですが、実際の性格は悪夢をもたらす妖魔に近く、眠る人の胸に乗って苦しめる存在として恐れられました。妖精というより、暗い側面を持つ夜の精霊です。 - アオス・シー|Aos Sí
アイルランド神話・民間伝承における代表的な妖精の民。古墳や塚、地下の他界に住むとされ、トゥアハ・デ・ダナーンの末裔・変容した姿とみなされることもあります。人間に恩恵も災いも与える神秘的な種族です。 - ブルーキャップ|Bluecap
イングランド北部、特に鉱山伝承に登場する精霊。青い炎や青い帽子をかぶった小さな妖精のように現れ、礼を尽くす鉱夫を鉱脈へ導いたり、危険を知らせたりするとされます。鉱山の守り手として語られることが多い存在です。 - ブラッグ|Brag
イングランド北東部ノーサンブリア地方の伝承に登場する、変身を得意とするいたずら好きの妖精・ゴブリン的存在。馬やロバなどの姿で人をだまし、乗せてから振り落とす話がよく知られています。 - ブラウニー|Brownie
スコットランドを中心に伝わる家の精霊。夜、人目のないうちに家事や農作業を手伝ってくれる善意の存在ですが、礼を欠いたり衣服を与えたりすると去ってしまうとされます。家庭を助ける代表的な妖精です。 - チェンジリング|Changeling
ヨーロッパ各地の妖精伝承に見られる概念。妖精が人間の赤ん坊をさらい、代わりに残した子とされます。単独の妖精名ではありませんが、妖精信仰を語る上で非常に重要な存在です。 - クルリカーン|Clurichaun
アイルランド伝承に登場する、酒好きで気まぐれな妖精。レプラコーンに近い孤独な妖精として扱われることが多く、酒蔵やワイン庫、酒場に取り憑いて飲み荒らす存在として語られます。 - ドラッハ|Drak
ドイツ系・フランス系の伝承にみられる、トカゲや竜に似た要素を持つ妖精・精霊。資料によって性格や姿がぶれるため厳密な統一像はありませんが、エルフ的存在と爬虫類的な性質が混ざった存在として紹介されます。 - ドルーデ|Drude
ドイツ民間伝承における夜の悪霊。悪夢や夜の圧迫感と結びつき、アルプと近い性質を持つ存在です。妖精というより夜魔・夢魔に近いものの、ヨーロッパの妖精・精霊の広い分類で並べられることがあります。

- ドゥエンデ|Duende
スペインおよびラテンアメリカの民間伝承に現れる小さな精霊・ゴブリン・家の主のような存在。地域によって姿も性格も異なりますが、家や森に棲む小柄でいたずら好きな超自然的存在として広く知られます。 - ダニー|Dunnie
イングランドとスコットランドの境界地方に伝わるブラウニー系の存在。小さな家の精霊として語られる一方、馬に化けて人をだます話もあります。土地に根づいた境界地方特有の妖精の一種です。 - ドワーフ|Dwarf
北欧・ゲルマン神話に登場する地下の小人族。鍛冶や工芸に優れ、神々の宝物を作る名工として知られます。妖精というより小人族・地の民ですが、広義ではフェアリー・フォークの一種として扱われることがあります。 - エルフ|Elf
ゲルマン神話・北欧神話に由来する代表的な妖精種族。美しく長命で超自然的な力を持つ存在として描かれることが多く、後世のファンタジー作品にも大きな影響を与えました。妖精世界の中心的存在のひとつです。 - エルルキング|Erlking
ドイツ・北欧系の伝承と文学に結びつく「妖精王」「エルフの王」にあたる存在。森の中で子どもを誘惑し、死へ導く不吉な王として知られます。ロマン派文学によって広く有名になりました。 - フェルトガイスト|Feldgeister
ドイツ伝承における畑・穀物・収穫に関わる野の精霊の総称。作物の最後の穂や収穫儀礼と密接に関わり、風や雷雨を起こす存在とも考えられました。単数ではなく総称として使われる語です。 - フォッセグリム|Fossegrim
ノルウェー・北欧伝承に登場する滝や川辺の精霊。美しい音楽、とくにフィドル(ヴァイオリン)演奏の名手として知られ、供物を捧げた人間に秘伝の演奏技術を授けるとされます。 - フアス|Fuath
スコットランド高地の伝承に見られる水の精霊・怪異の総称。嫌悪や恐れを呼ぶ存在として理解され、しばしば川・湖・海辺と結びつきます。地域によっては水妖・亡霊・ゴブリン的存在まで含む広い語です。 - ガンカナフ|Gancanagh
アイルランドの伝承に登場する、女性を誘惑する男性の妖精。甘い言葉で人を魅了し、近づいた者を破滅へ導く危険な存在として知られます。美貌と誘惑を武器にする妖精として有名です。 - ゴブリン|Goblin
ヨーロッパ各地の民間伝承に登場する小型の妖魔・小妖精の総称。いたずら好き、貪欲、粗野といった性格で描かれることが多い一方、地域によっては家や洞窟に住む精霊的存在ともされます。 - ヘドリー・カウ|Hedley Kow
イングランド北部ノーサンバーランド地方に伝わる変身妖精。姿を次々に変えて人をだますことで知られ、地元ではいたずら好きな妖精・ボーグルの一種として語られてきました。 - ホブ|Hob
イングランド北部や中部に伝わる家の精霊。ブラウニーに近い存在で、助けにも迷惑にもなる気まぐれな性格を持ちます。夜に働き、農場や家の雑事を手伝う一方、怒らせると厄介な仕返しをするともいわれます。 - ホブゴブリン|Hobgoblin
イングランド民間伝承の家の精霊。元来は人間の家に住み助ける存在でしたが、後代になると、よりいたずら好きで不気味な小妖精として理解されるようになりました。ブラウニーやホブと近縁です。 - ヒュルドラ|Hulder / Huldra
北欧・スカンディナヴィア伝承の森の精霊。非常に美しい女性の姿で現れますが、尻尾や木の幹のような背中など、人ならざる特徴を隠しているとされます。男を魅了して森へ誘う妖精として有名です。 - イラチョ|Iratxo
バスク神話に登場する小さな精霊。農場や家、人間の暮らしを助ける守り手のような存在として語られ、地域によってはいたずらもするものの、基本的には保護的な妖精として理解されます。 - カボウター|Kabouter
オランダの民間伝承に登場する小人の精霊。家や農場の近く、森や丘などに住むとされ、夜のあいだに家事や家畜の世話を手伝う存在として語られる。ヨーロッパ各地のノームやブラウニー、ニッセに近い性格を持つ。 - クラバウターマン|Klabautermann
ドイツ北岸からオランダ沿岸、バルト海沿岸の船乗りの伝承に登場する、船に宿るコボルト系の水霊。甲板や船倉で働きを助けることもある一方、姿を見せること自体が沈没の前触れと考えられることもあり、吉凶両面を持つ海の精霊として知られる。 - ノッカー|Knocker
イングランド南西部のコーンウォールやデヴォンの鉱山伝承に登場する小人の鉱山精霊。坑道の壁を叩く音で鉱脈の存在や崩落の危険を知らせると信じられ、いたずら好きだが、時に鉱夫を守る存在としても恐れ敬われた。 - コボルド|Kobold
ドイツ語圏の民間伝承に登場する家霊・地霊・鉱山霊の総称。家に住むものは家事や厩の仕事を助け、鉱山に住むものは地下の気配と結び付けられる。恩を受ければ助け、粗末に扱われると災いをもたらす両義的な存在である。 - コリガン|Korrigan
フランス北西部ブルターニュ地方の伝承に登場する妖精または小人の霊的存在。泉や石、古い塚などと結び付けられ、美しい女性の姿で人を誘惑する話もあれば、小さな異界の民として語られることもある。

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