11. オノスケリス(Onoskelis)
属性:誘惑・詐術・幻惑・異形・夢魔
オノスケリスは『ソロモンの遺訓』に登場する、非常に古い女性悪魔の一柱です。 その姿は「美しい女性でありながら、脚がロバのように毛深い」という、魅惑と異形が混ざり合った存在として描かれます。 彼女は人間の男を誘惑し、財産を盗み、家庭を破壊する性質を持ち、夢や幻惑を通じて人の精神に影響する“陰湿なタイプの夢魔”として恐れられました。 肉体よりも精神・財産面に大きな被害を与える、知性を伴う危険な悪魔です。
12. オビゾス(Obizuth / Obyzouth)
属性:出産妨害・悪夢・風・病・死の予兆
オビゾスは、出産を邪魔し、産まれたばかりの子どもを奪うとされる女性悪魔です。 その行動は夜の風に乗ってやって来るとされ、流産や乳児の急死などの不幸が起こると「オビゾスの仕業」と恐れられていました。 彼女の存在は非常に古く、中東〜ユダヤ圏の広い地域で“母と子を脅かす悪魔”の代表格とされ、病気や悪夢を引き寄せるとも考えられていました。
13. アビズー(Abyzou)
属性:嫉妬・死産・不妊・災厄・病気
アビズーは強烈な“嫉妬”を象徴する女性悪魔で、人間の幸福と豊穣を妬み、特に母性と生命の誕生に強い敵意を抱く存在です。 彼女の嫉妬は世界を巡り歩き、女性の不妊や死産、苦しみの原因を作るとされました。 古代ギリシア・ユダヤ・中東文化で広く同一視され、性質や行動が地域ごとに変化しながらも “嫉妬の女悪魔” という中核は一貫しています。 「人間から幸福を奪うこと」を目的とする、純粋で破壊的な悪魔です。
14. 女性ウットゥク(Female Uttukku)
属性:害悪・呪い・病・亡霊・執着
ウットゥク(Uttukku)はメソポタミアの“害悪の霊(悪魔)”として古文献に頻出し、女性型の個体も明確に記されています。 女性ウットゥクは、死者の魂や怨念に由来するとされ、生者に取り憑いて病気・不幸・精神崩壊を引き起こす悪魔的存在です。 物理的な攻撃よりも、長期的な呪い・不幸・執念深い魂の圧力を特徴とし、家族単位で災厄を招くと恐れられました。 彼女らは “悪霊の専門職” とも言えるほど、呪いや害悪に特化したデーモンのカテゴリーです。
15. ジャヒー(Jahi)
属性:淫乱・破滅・堕落・血・復活・罪の拡大
ジャヒーはゾロアスター教における“淫乱の悪魔(Daeva)”であり、その悪名は非常に高いものがあります。 伝承によれば、ジャヒーが「欲望」と「罪」を囁いたことで、死の王アングラ・マイニュが復活し、世界に悪が溢れ始めたとされています。 そのため、ジャヒーは単なる誘惑を超え、「世界を堕落させる引き金を引いた存在」として、悪魔学的にも特別な位置を持ちます。 血や肉体の堕落、社会的破滅を象徴する強力な女性悪魔です。
16. ブーシュヤンスター(Bushyasta)
属性:怠惰・遅延・無気力・誘惑・時間の浪費
ブーシュヤンスターはゾロアスター教に登場する“怠惰の悪魔(Daeva)”です。 彼女は人々の時間感覚を狂わせ、やるべきことを後回しにさせ、人生を停滞させる力を持つとされます。 彼女の囁きは非常に静かで、気づかぬうちに人の意志を削ぎ、家事・仕事・祈りなどの日常行動を妨害するという特徴があります。 その存在は「人を直接攻撃しないが、確実に人生を蝕む悪魔」として象徴的であり、精神的・行動的な堕落に深く関与するとされます。
17. パリカー(Parika / Pari)
属性:堕落・魅惑・幻惑・魔術・淫乱
パリカー(Parika)は、ゾロアスター教文献の中で “悪魔的精霊(Daevaに属する者)” として扱われる女性悪魔です。 美しい姿で人間の前に現れ、魔術と誘惑で男を破滅へ導くとされます。 地域ごとの伝承により姿や性質は揺れますが、ゾロアスター教の体系においては明確に「堕落を促す女悪魔」と分類されます。 その性質は、リリス系悪魔に類似しながらも、より魔術的・儀式的な面を持つ点が特徴です。
18. グーラ(Ghoula)
属性:変身・捕食・欺瞞・砂漠・夜行・悪霊化
グーラはアラビア圏の悪魔化した女性ジンで、砂漠や荒野で旅人を襲う存在として恐れられました。 美しい女性に化けて人間に近づき、油断したところを捕食するという性質があり、欺瞞と変身が主要な力となっています。 本来はジン(精霊)ですが、特定の伝承では「シャイターン(悪魔)」の分類に入るため、完全に“女性悪魔”として扱われます。 夜間の移動や孤独な人間を標的にする、非常に古い捕食型の悪魔です。
19. 女性ガッラ(Female Gallu Demon)
属性:冥界・死者の誘拐・呪い・暴力・獄吏
ガッラ(Gallu)はメソポタミアの冥界に属する悪魔で、死者を地獄へ引きずり込む役割を持つ獰猛なデーモンです。 その中には女性のガッラも記録されており、男性以上に執念深く、特定の犠牲者を狙って地上に現れるとされています。 彼女たちは死の世界と強く結びついており、「生者を冥界に連れ去る」点で非常に危険かつ直接的な悪魔です。 また、呪詛儀礼とも深い関係があり、災厄や死の前兆として恐れられました。
20. ラバルトゥ(Labartu / Labartu Demoness)
属性:病・出産の敵・呪術・疫病・悪夢
ラバルトゥはラマシトゥと密接に関連する古代メソポタミアの女悪魔で、出産・乳児・母体への害悪に特化した存在です。 乳児の命を奪う、母親の精神を蝕む、病を運ぶといった行動が記録に残されており、古代の護符や魔除けでは“ラバルトゥ除け”が重要な役割を果たしていました。 その性質は極めて攻撃的で、ラマシトゥよりもさらに“病と呪い”に特化した女悪魔として恐れられています。 夢の中に現れ、精神的な恐怖を与える点も特徴です。
怖いけれど魅力的な“女悪魔”の世界
女性悪魔は、古い神話の中でひときわ強い存在感を放ちながら、
その背後には宗教や文化に根ざした象徴が静かに息づいています。
今回取り上げた20体は、いずれも
名前の意味・属性・由来・物語が明確に残されている「実在の女性悪魔」ばかり。
創作やキャラクター設定、世界観づくりのヒントにもなり、
背景を理解するだけで物語に奥行きと説得力が生まれます。
気になる存在がいたら、その由来や物語をそっとたどってみてください。
きっと、創作や発想の中で新しいイメージが広がっていきます。
FAQ よくある質問
女性悪魔にはどんな種類がありますか?
女性悪魔には、リリスのように夜や誘惑を象徴する存在、ラマシトゥのように病や死産と結びつく悪魔、グレモリーのように魔導書に登場する悪魔などがあります。 本記事では、一次文献に記録された“厳密に悪魔と確認できる20体”をまとめています。
女性悪魔と女神や妖精はどう違うのですか?
女性悪魔は、宗教文献や魔導書において「悪しき霊(デーモン)」として定義されています。一方、女神や妖精は本来は神聖・中立・自然霊として扱われます。 本記事では、妖怪・魔女・精霊など曖昧な存在は除外し、悪魔学的に確定したものだけを掲載しています。

Comment