- グラシュティン|Glashtyn
マン島伝承の水辺の妖精的存在。水から現れる精霊、馬の性質を持つ怪異、あるいは変身する男性存在として伝わるなど、地方や語り手によって姿が揺れ動く。海岸・川辺・沼地と結び付けられ、人間の女性に近づく危険な妖精として語られることもある。 - グロアック|Groac’h
ブルターニュ伝承の女性の妖精・魔女的存在。海辺や泉、洞穴の近くに住むとされ、美しい姿で現れることもあれば、老婆めいた不気味な姿で語られることもある。贈り物を与える恵み深さと、人を破滅へ導く恐ろしさの両面を持つ、水辺の古い女性霊である。 - グラゲズ・アンヌン|Gwragedd Annwn
ウェールズ伝承の湖に住む女性の妖精たち。「異界アンヌンの女たち」とも解され、湖面や泉から姿を現し、人間の男性と婚姻する説話でも有名。水の底に広がる異界と地上世界をつなぐ存在で、湖の牛や富、禁忌の婚姻といったテーマと深く結び付いている。 - グウィリオン|Gwyllion
ウェールズ山地の霧や夜道に現れる妖精的存在。語の意味は広く、幽霊・夜のさまよう者のようにも使われるが、民間伝承では山道で旅人を迷わせる女性存在として語られることが多い。嵐の夜に戸口へ現れて火を求める話もあり、山の気配そのもののような不思議さを持つ。 - ハルティヤ|Haltija
フィンランド伝承の守護精霊。家、森、水辺、土地など、それぞれの場所や領域に宿る「主」のような存在で、日本語では妖精・精霊・守護霊の中間のような存在として紹介されることが多い。目に見えないが、その場所の秩序や幸運を守るものとして信じられてきた。 - ウールの妖精たち|Houles Fairies
ブルターニュ沿岸の海食洞「ウール(houles)」に住むとされる妖精たちの総称。海辺の洞穴の奥で暮らし、贈り物を与えたり、人間と取引したりする一方、無礼や裏切りには厳しく報いるとされた。共同体を作って暮らす妖精たちとして語られる点が特徴的である。 - イエレ|Iele
ルーマニア伝承の美しい女性妖精たち。夜、月光の下で輪になって踊り、その場に不思議な痕跡を残すといわれる。歌や舞で人を魅了する一方、礼を失した者や彼女たちをのぞき見た者には病や狂気をもたらすとも信じられ、魅惑と禁忌の両面を持つ集団的妖精である。 - ジャシー・ジャテレ|Jasy Jatere
グアラニー系伝承に登場する小柄で神秘的な存在。森や集落の周辺に現れ、子どもや昼寝の時間、また人目につかない自然の領域と結び付けられる。地域によっては悪戯好きの精霊、また別の地域では神話的存在として語られ、南米伝承の中では妖精に近い小さきものとして扱われることが多い。 - キルモウリス|Kilmoulis
スコットランドやイングランド北部境界地帯の伝承に登場する家付きの妖精。非常に大きな鼻を持ち、粉ひき場や納屋に出入りする、醜いが働き者の存在として知られる。人の役に立つ一方で、いたずらもするため、親しみやすさと不気味さが同居する境界妖精の一種といえる。 - リアナン・シー|Leanan Sídhe
アイルランド伝承に登場する「妖精の恋人」。芸術家や詩人の前に現れ、愛と引き換えに強い霊感や創造性を与えるとされる。しかし、その関係は長く続かず、恋人となった人間は短く激しい生を送るとも語られる。美と破滅が結び付いた、ケルト伝承でも特に印象的な妖精である。 - メロウ|Merrow
アイルランドの海の妖精。人魚や人男に近い存在として伝えられ、海中世界と人間界を行き来するとされる。女性のメロウは美しく、赤い帽子を失うと海へ帰れなくなるという話がよく知られている。海辺の恋物語や別離の説話に登場する、哀しみを帯びた水の妖精である。 - モインジャー・ヴェッギー|Mooinjer Veggey
マン島語で「小さな人々」を意味し、マン島の妖精たち全般を指す呼び名。特定の一体を示す固有名ではなく、島に住むさまざまな妖精存在をまとめて呼ぶ総称として使われる。丘や古塚、夜の風景と結び付き、人々の暮らしのすぐそばにいる隣人のような妖精観をよく表している。 - マリ=モルガン|Mari-Morgan
ブルターニュ伝承の海辺・川口・洞穴に現れる女性の水妖精。美しい歌声や姿で船乗りや若者を引き寄せ、海の底や水中の宮殿へ連れ去る話が伝わる。地域によっては「モルガン」「モルゲン」とも呼ばれ、ケルト圏の水辺の妖精像を代表する存在の一つである。 - バーゲスト|Barghest
イングランド北部に伝わる黒い怪犬の怪異。巨大な牙や爪を持つ不吉な存在として語られ、地域によっては幽霊や家付き精霊のように解釈されることもある。妖精そのものというより、イングランドの妖異・怪異の系譜に属する存在として扱うのが適切。 - ビーン・ニー|Bean Nighe
スコットランドのゲール系伝承に登場する「洗う女」の精霊。川辺や浅瀬で、これから死を迎える者の血の付いた衣服を洗う姿が目撃されるとされ、不吉な前兆を告げる存在として恐れられてきた。バンシーに近い死の予兆の精霊として知られる。 - ベルクメンヒ|Bergmönch
ドイツの山地や鉱山に伝わる鉱山精霊。「山の修道士」とも訳され、修道士姿あるいは鉱夫の姿で現れる。気まぐれで危険な面もあるが、勤勉で誠実な鉱夫には鉱脈を教えたり助力したりすることもある。山の妖精・鉱山の精霊として位置づけられる。 - ビエレゼル|Bieresel
ドイツ民間伝承に見られる「ビール驢馬」と呼ばれる妖異。コボルト系の家霊・酒場怪異とされることがあり、夜道で酔客の背に飛び乗って苦しめる話で知られる。酒や居酒屋文化に結び付いた、いたずら好きで懲罰的な存在として語られる。 - ビリー・ブラインド|Billy Blind
イングランドおよびローランド・スコットランドのバラッドに登場する家の精霊。ブラウニーに似た助言者・守護者として現れ、登場人物に真実を知らせたり危機を回避させたりする。伝承上は「家を見守る妖精的存在」として扱いやすい。 - ビローク|Biróg
アイルランド神話・伝承に見える女性の超自然的存在。バロールの娘エスニウとキアンをめぐる物語で、魔力を用いて人間を助ける存在として現れる。近代以降は妖精・女魔術師・山の霊的女性として紹介されることが多い。 - ブラッディ・ボーンズ|Bloody Bones
イングランドおよび北米にも広がった民間伝承上の恐ろしい怪異。子どもをしつけるための脅し文句として使われたボギーマン型の存在で、水辺の怪異として語られることもある。妖精というよりは、妖怪・怪物・脅かしの怪異に近い。

- ブルー・メン・オブ・ザ・ミンチ|Blue Men of the Minch
スコットランド北西部、アウター・ヘブリディーズ諸島と本土の間の海峡ミンチに棲むとされる青い海の精霊。船を転覆させようと嵐を起こしたり、船長に詩の応酬を挑んだりすることで知られる。海の妖精・海の怪異として非常に特色のある存在。 - ボダッハ|Bodach
ゲール系伝承に登場する「老いた男」の怪異・精霊。地域によっては冬や荒れた自然と結び付けられ、また別の地域では子どもを脅すボギーマンとして語られる。妖精というより、ゲール圏の民間信仰における古い男の怪異像といえる。 - ボグル|Bogle
スコットランドおよびイングランド北部で伝えられる、いたずら好きの精霊・怪異の総称的な呼び名。人を困らせたり、道に迷わせたり、不可解な現象を起こしたりする存在として語られる。特定の一体ではなく、広い意味の妖精・幽霊・怪異を指すこともある。 - ブーブリー|Boobrie
スコットランド西岸の湖や湿地に伝わる変身性の強い怪異。巨大な水鳥の姿で語られることが多いが、水牛・水馬・巨大な虫のような姿を取ることもある。妖精よりは幻獣・湖の怪物寄りだが、ケルト圏の超自然存在一覧ではしばしば近接して扱われる。 - ブラウン・マン・オブ・ザ・ミューアズ|Brown Man of the Muirs
イングランド北部とスコットランド境界地帯に伝わる、荒野に住む小柄な精霊。野生の獣たちを守る存在として現れ、狩人に対して縄張りを侵すなと警告する話が有名。自然の守護者としての妖精像が色濃い存在。 - カイリャハ|Cailleach
アイルランド・スコットランド・マン島などゲール文化圏に広く見られる老女神・冬の女神。山や岩、嵐、冬の到来と結び付けられ、土地や自然そのものを形づくる存在として語られる。妖精というより神格的存在だが、ケルトの妖精伝承と隣接した文脈で扱われることが多い。 - ヒュルドフォルク|Huldufólk
アイスランド伝承の「隠れた人々」。岩山・丘・溶岩地帯などに住むとされ、人間には見えにくいが独自の共同体を持つ存在として信じられてきた。アイスランドでは最もよく知られる妖精・隠れ人の一群。 - ポルチューン|Portunes
中世イングランドの文献に記された小さな家の精霊。非常に小柄で老いた顔を持つとされ、夜に農家へ入り込んで火にあたったり、家事や力仕事を素早く片付けたりする一方、いたずらも働く。ブラウニーに近い性格を持つ古い家霊の一種。 - シェットランド・トロウ|Shetland Trow
シェトランド諸島・オークニー諸島の伝承に登場する妖精・精霊。塚や丘の中に住み、夜になると地上へ出てきて音楽を奏でたり、人間を惑わせたり、時に人をさらったりするとされる。北方の妖精譚を代表する存在の一つ。 - シルフ|Sylph
16世紀以降の西洋神秘思想で語られる空気の精霊。四大元素のうち「風・空気」に属する精霊として体系化され、後世には妖精・フェアリーに近いイメージでも受け取られるようになった。民間伝承の妖精というより、思想・文学由来の精霊。 - ウリスグ|Ùruisg
スコットランド高地の伝承に見られる孤独な自然霊。岩場や滝、山中の寂しい場所に現れるとされ、半人半獣のような姿で描かれることがある。ブラウニーに似た面もあるが、より野生的で辺境に属する妖精的存在として知られる。 - ヴィラ|Vila
南スラヴを中心としたスラヴ伝承の女性精霊。森・山・水辺・雲・風など自然と深く結び付き、美しくも危うい存在として描かれる。人に恵みを与えることもあれば、怒らせると恐ろしい報復をすることもある。スラヴ圏の代表的な妖精の一種。 - ヴィリー|Willi / Wilis
中央・東欧の伝承や文学に登場する、若くして死んだ娘たちの霊的存在。特に踊りの場面と結び付けられ、夜の森で男を踊り疲れさせて死に至らせる話で知られる。バレエ『ジゼル』のウィリとしても有名で、妖精と亡霊の中間のような存在。 - 天狐|Sky Fox / Celestial Fox
中国を起源とする東アジアの狐霊伝承に見られる高位の狐精。長い修行や長寿の末に天へ昇る神秘的な狐として語られ、通常の狐妖よりも格の高い霊獣・神霊的存在とされる。単なる「妖精狐」より、「天狐」とした方が正確。 - クミホ|Kumiho
朝鮮半島の伝承に登場する九尾の狐。中国の九尾狐や日本の狐伝承と共通点を持つが、韓国では人を惑わす妖異として語られることが多い。妖精というより狐の精霊・妖狐として理解するのが自然。 - 火狐|Tulikettu
フィンランド伝承の「火の狐」。雪原を駆ける狐の尾が火花を散らし、それがオーロラになるという美しい伝承で知られる。通常のフェアリーではないが、北方の自然霊・幻獣として妖精一覧の周辺で紹介されることがある。 - 座敷童子|Zashiki-warashi
主に岩手県を中心とする東北地方の民間伝承に登場する家の精霊。座敷や蔵に棲む子どもの姿で現れ、足音やいたずらで気配を示すが、その家に富や繁栄をもたらすとも信じられてきた。日本における代表的な家の妖精的存在。 - キジムナー|Kijimunaa / Kijimuna
沖縄に伝わる赤髪の木の精。ガジュマルなどの古木に棲むとされ、小柄な子どものような姿で描かれる。いたずら好きだが、人と親しくなって漁を助ける話も多く、魚の目だけを好んで食べるという特徴でも知られる。 - コロポックル|Korpokkur / Koropokkuru
アイヌ伝承に登場する小人の民。「フキの葉の下の人々」と解されることが多く、非常に小柄で、穴居し、漁や交易を行ったと語られる。アイヌがこの地に来る以前の先住の小さき民として伝えられることもある。 - キーヌシー|Kiinushii
沖縄に伝わる木の精。古く大きな木に宿る穏やかな精霊とされ、人に害を与えない存在として語られる。キジムナーほど広く知られた名ではないが、地域資料には「木の精」として確かに見られるため、沖縄の樹木霊の一種として掲載可能。 - 山童|Yamawaro
九州を中心に西日本の山地で語られる山の精霊・山の怪異。小柄で力が強く、木こりや山仕事の人々と関わる存在として伝わる。地域によっては河童が冬に山へ入った姿ともされ、山の自然霊と水辺の怪異が交差したような存在である。
妖精伝承は、国ごとの自然観や祈りを映している
妖精とひとことで言っても、その姿や役割は国や地域によって大きく異なります。
森を守る存在、家に幸運をもたらす存在、水辺で人を誘う存在、死や異界の気配を知らせる存在など、それぞれの妖精には、その土地の自然観や暮らし、信仰の名残が映っています。
世界の妖精一覧として見渡してみると、似た性質を持ちながらも表現の仕方が違うもの、逆に同じ「妖精」と呼ばれながらまったく印象の違うものが数多く見つかります。妖精の名前一覧を眺めるだけでも楽しいですが、各国の妖精伝承とあわせて読むと、伝説や神話の世界がいっそう立体的に感じられるはずです。
気になる妖精をひとつずつ追いかけていく読み方もおすすめです。
好きな地域の伝承から入ってみるのもよいですし、森・湖・海・家といった場所ごとに比べていくと、それぞれの文化が大切にしてきたものが自然と見えてきます。幻想的な名前を楽しみたい方にも、神話や民話を深く味わいたい方にも、長く眺めていたくなる世界が広がっています。
よくある質問
妖精と精霊は同じものですか?
完全に同じとはいえません。妖精はヨーロッパ系の伝承を中心に広まった呼び方として知られていますが、日本語では精霊や自然霊、小人、家霊のような存在まで含めて紹介されることも多くあります。伝承ごとの背景を見ると、妖精に近いものと神霊に近いものが混在しています。
世界の妖精にはどんな種類がありますか?
森の妖精、水の妖精、家の精霊、小人の民、夜に現れる妖異、恋や誘惑にまつわる妖精、幸運をもたらす存在などがあります。同じ国の中でも役割はさまざまで、自然を守るものもいれば、人に試練を与えるものもいます。
日本にも妖精のような存在はいますか?
日本にも妖精に近い存在は多く見られます。木霊、座敷童子、キジムナー、コロポックルなどは、その代表例としてよく知られています。厳密には西洋のフェアリーとは異なりますが、自然や家に宿る不思議な存在として共通する面があります。
有名な妖精にはどんな存在がいますか?
エルフ、ブラウニー、レプラコーン、ピクシー、パック、バンシー、セルキーなどは特によく知られています。日本では木霊や座敷童子、沖縄のキジムナーも広く知られる存在です。

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