中国の歴史や文化を語るとき、必ず登場するのが「美女たち」の物語です。
西施・楊貴妃といった四大美女をはじめ、漢王朝を彩った皇后や妃、三国志や『紅楼夢』に登場する伝説的な美人たち――彼女たちの存在は、単なる外見の美しさを超え、時代を動かす象徴として記録や文学に刻まれてきました。
本記事では、中国の歴史と伝説に登場する美しい名前を持つ美女を、時代別・カテゴリ別に整理して紹介します。名前の由来や背景、文化的な意味を知ることで、中国史の新たな一面を発見できるでしょう。
中国史に登場する女性の美しい名前 一覧
1. 四大美女とは―中国史を代表する伝説の美人たち
中国の美女といえばまず語られるのが「四大美女」です。西施・王昭君・貂蝉・楊貴妃は、それぞれの時代において絶世の美しさと強い影響力を持ち、国家や歴史の行方を左右したと伝えられます。
- 西施(Xī Shī/シー・シー/せいし)
春秋時代・越国の美女。呉王夫差を惑わせ、越王勾践の復讐に利用されたとされる。中国四大美女の筆頭として伝えられる。 - 王昭君(Wáng Zhāojūn/ワン・ジャオジュン/おうしょうくん)
前漢の宮女。画師に賄賂を渡さなかったために美しさが隠されていたが、やがて呼び出され匈奴に嫁ぎ、漢と匈奴の和平に貢献した。 - 貂蝉(Diāo Chán/ディアオ・チャン/ちょうせん)
後漢末〜三国時代の伝説的美女。『三国志演義』に登場し、董卓と呂布の対立を誘発した女性として描かれる。史書に実在の記録はなく、物語上の人物。 - 楊貴妃(Yáng Guìfēi/ヤン・グイフェイ/ようきひ)
唐代の皇妃。玄宗皇帝に深く愛され、絶世の美人として知られるが、安史の乱の混乱の中で悲劇的な最期を遂げた。
2. 春秋戦国時代の美女たち―諸侯を動かした容姿と知恵
春秋戦国は群雄割拠の時代であり、美貌を持つ女性が外交や策略に活用されることも珍しくありませんでした。西施をはじめ、夫差や勾践と関わった女性たちは、美しさとともに政治的な意味合いを帯びて語り継がれています。
- 西施(Xī Shī/シー・シー/せいし)
越国の美女。呉王夫差を惑わせ、越王勾践の復讐に利用された。四大美女のひとり。 - 鄭旦(Zhèng Dàn/ジェン・ダン/ていたん)
西施と同時代に越国に仕えた美女。西施とともに呉王夫差に近づいたとされる。 - 褒姒(Bāo Sì/バオ・スー/ほうじ)
西周の幽王に寵愛された美女。「一笑千金」と言われ、彼女を笑わせるために烽火を上げ、国を滅ぼしたと伝わる。 - 夏姫(Xià Jī/シァ・ジー/かき)
春秋時代の美女。斉・鄭・衛など複数の諸侯に寵愛され、その影響力から「乱国の美女」と呼ばれた。 - 文姜(Wén Jiāng/ウェン・ジアン/ぶんきょう)
斉の公主で魯に嫁いだが、兄である斉の桓公と不倫関係にあり、魯の桓公を死に至らせたとされる。 - 孟姜女(Mèng Jiāng Nǚ/モン・ジャン・ニュー/もうきょうじょ)
戦国時代に伝わる伝説上の女性。夫が万里の長城の工事で亡くなり、嘆き悲しんで城壁を崩したという物語で知られる。 - 南子(Nán Zǐ/ナン・ズー/なんし)
衛の君主・衛簡公の夫人。孔子が衛を訪問した際に会見を求め、古典にその名が記録されている。 - 秦穆公の娘・穆姫(Mù Jī/ムー・ジー/ぼくき)
春秋時代の秦の公主で、戎の国に嫁いだ。彼女の縁談は「秦晋の縁」を強め、後世まで語られる。
3. 漢王朝の美女とは―皇帝を魅了した宮廷女性と才媛
漢代は中国文化の礎を築いた大帝国であり、後宮には数多くの美女が集められました。趙飛燕や王昭君などは、その美貌だけでなく、皇帝との関わりや国際関係にも大きな影響を与えました。また、班婕妤のように文才と品格を兼ね備えた女性も登場し、女性の美しさと知性が共に重視された時代でもあります。
- 王昭君(Wáng Zhāojūn/ワン・ジャオジュン/おうしょうくん)
前漢の宮女。和親政策により匈奴に嫁ぎ、民族間の和平に貢献した。四大美女のひとり。 - 趙飛燕(Zhào Fēiyàn/ジャオ・フェイヤン/ちょうひえん)
前漢の成帝に寵愛された皇后。舞う姿が燕のように軽やかだったと伝わり、その美貌は「傾国の色」と称された。 - 趙合徳(Zhào Hédé/ジャオ・フードゥー/ちょうごうとく)
趙飛燕の妹。姉とともに成帝に寵愛され、宮廷内の勢力争いにも関わった美女。 - 班婕妤(Bān Jiéyú/バン・ジエユー/はんしょうよ)
前漢の才女。詩文に優れ、慎み深い性格で知られた。皇帝の寵愛を受けたが、後に退き品格ある生涯を送った。 - 馮媛(Féng Yuàn/フォン・ユエン/ふうえん)
前漢の女性。元帝に仕え、熊の襲撃から皇帝を守った勇敢な逸話で知られる。 - 李夫人(Lǐ Fūrén/リー・フーレン/りふじん)
前漢・武帝の寵姫。美貌と舞の才に優れたが、若くして病に倒れた。 - 衛子夫(Wèi Zǐfū/ウェイ・ズーフー/えいしふ)
前漢・武帝の皇后。長く寵愛を受け、皇后として権勢を振るった。 - 陳嬌(Chén Jiāo/チェン・ジャオ/ちんきょう)
前漢の皇后。武帝の最初の皇后であったが、後に寵愛を失い廃される。 - 王政君(Wáng Zhèngjūn/ワン・ジェンジュン/おうせいくん)
前漢の元帝の皇后で、後に皇太后となる。長寿で、王氏一族が権勢を握る礎を築いた。 - 竇姫(Dòu Jī/ドウ・ジー/とうき)
前漢・文帝の皇后。賢明で倹約を尊び、後世に模範的な皇后として称えられた。 - 戚夫人(Qī Fūrén/チー・フーレン/せきふじん)
前漢の高祖・劉邦の寵姫。美貌で愛されたが、呂后との権力闘争に敗れ悲惨な最期を遂げた。 - 呂雉(Lǚ Zhì/リュイ・ジー/りょち)
前漢の劉邦の皇后。美しさというより権力者として知られるが、初期漢王朝の政治に強大な影響力を持った。 - 許皇后(Xǔ Huánghòu/シュー・ホアンホウ/きょこうごう)
後漢の光武帝の皇后。正統を守り、皇后としての徳を重んじた人物。 - 陰麗華(Yīn Lìhuá/イン・リーファ/いんれいか)
後漢の光武帝の皇后。夫婦仲が深く、美貌と徳を兼ね備えていたことで知られる。 - 馬皇后(Mǎ Huánghòu/マー・ホアンホウ/ばこうごう)
後漢の明帝の皇后。清廉で学問に優れ、政治にも助言した賢后。
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