4. 三国時代と美女たち―歴史と物語に描かれる女性像
三国志の時代には、実在の人物と小説『三国志演義』に登場する伝説的な美女の両方が存在します。貂蝉のように物語の中で重要な役割を果たす女性もいれば、蔡文姫のように実在し、文学や音楽でその名を残した女性もいます。戦乱の世において、美しさと才能は政治や文学の両面で光を放ちました。
- 貂蝉(Diāo Chán/ディアオ・チャン/ちょうせん)
後漢末の伝説的美女。『三国志演義』で、董卓と呂布の対立を生んだとされる。四大美女のひとり。 - 大喬(Dà Qiáo/ダー・チャオ/だいきょう)
呉の名将・孫策の妻。三国随一の美女姉妹「二喬(にきょう)」の姉として有名。 - 小喬(Xiǎo Qiáo/シャオ・チャオ/しょうきょう)
周瑜の妻で、大喬の妹。美貌と才気で知られ、赤壁の戦いの逸話にも登場する。 - 蔡文姫(Cài Wénjī/ツァイ・ウェンジー/さいぶんき)
後漢末の才女。蔡邕の娘で、琴や詩に優れた。匈奴に連れ去られたが、後に帰国した。 - 甄氏(Zhēn Shì/ジェン・シー/しんし)
魏の文帝・曹丕の皇后で、曹叡の母。もとは袁紹の息子の妻だったが、その美しさで曹丕に迎えられた。 - 郭皇后(Guō Huánghòu/グオ・ホアンホウ/かくこうごう)
魏の明帝・曹叡の皇后。甄氏の死後に皇后となり、宮廷の権勢を握った。 - 歩練師(Bù Liànshī/ブー・リエンシー/ほれんし)
呉の孫権の側室。美貌と温和な性格で知られ、後に孫登の母となり皇后に追尊された。 - 王異(Wáng Yì/ワン・イー/おうい)
漢中太守の妻。美しさだけでなく、智略と忠義で有名。馬超に抵抗した逸話が残る。 - 張春華(Zhāng Chūnhuá/ジャン・チュンホワ/ちょうしゅんか)
魏の司馬懿の妻。美貌と剛毅な性格で知られ、後に晋王朝の祖母となった。 - 伏寿(Fú Shòu/フー・ショウ/ふくじゅ)
後漢献帝の皇后。董承らと共に曹操の打倒を企てたが、発覚して殺された。 - 董貴人(Dǒng Guìrén/ドン・グイレン/とうきじん)
後漢献帝の妃の一人。曹操によって寵愛を奪われることを恐れ、悲劇的な最期を遂げた。 - 孫魯班(Sūn Lǔbān/スン・ルーバン/そんろはん)
孫権の娘で、孫和・孫覇の争いに介入した。政治的に影響力を持ち、美貌も伝えられる。
5. 唐代の美女とは―詩や芸術に輝く絶世の容姿
唐の時代は文化と芸術が大きく花開き、多くの美女が詩や絵画に描かれました。楊貴妃はもちろん、薛濤や紅拂女などは美しさとともに知性や行動力を兼ね備えています。唐代の美女たちは外見の美だけではなく、詩歌・音楽・舞踊など芸術的な魅力によっても人々を惹きつけました。
- 楊貴妃(Yáng Guìfēi/ヤン・グイフェイ/ようきひ)
玄宗皇帝に愛された絶世の美女。唐代最大の寵姫で、安史の乱の混乱の中で悲劇的に死を遂げた。 - 武則天(Wǔ Zétiān/ウー・ズォティエン/ぶそくてん)
唐の皇后から唯一の女帝となった女性。政治的権力の象徴であると同時に、その美貌と知略で歴史に名を残した。 - 太平公主(Tàipíng Gōngzhǔ/タイピン・ゴンジュー/たいへいこうしゅ)
唐の中宗の娘。美貌と政治力を兼ね備え、当時の政局に大きな影響を与えた。 - 薛濤(Xuē Tāo/シュエ・タオ/せっとう)
長安の名妓で、詩人としても高名。美貌と文才を併せ持ち、唐代を代表する才媛の一人。 - 魚玄機(Yú Xuánjī/ユー・シュアンジー/ぎょげんき)
唐代の女詩人。美貌と情熱的な詩で知られ、波乱に満ちた生涯を送った。 - 紅拂女(Hóng Fú Nǚ/ホン・フー・ニュー/こうふつじょ)
隋末唐初の伝説的美女。剣を持って奔走し、李靖と共に唐の建国に関わったとされる。 - 張麗華(Zhāng Lìhuá/ジャン・リーファ/ちょうれいか)
陳の後主・陳叔宝に寵愛された美女。唐による南朝陳の滅亡とともに悲劇的な最期を迎えた。 - 沈珍珠(Shěn Zhēnzhū/シェン・ジェンジュ/しんちんじゅ)
唐の粛宗の妃。美貌で愛され、安史の乱の際に幽閉された悲劇の女性。 - 楊玉環(Yáng Yùhuán/ヤン・ユイファン/ようぎょくかん)
楊貴妃の本名。玄宗に仕え、音楽と舞踊に優れた才能を発揮した。 - 杜秋娘(Dù Qiūniáng/ドゥ・チウニャン/としゅうじょう)
唐代の歌妓。後に王度之に嫁ぎ、その美貌と歌舞で名を残した。 - 劉采春(Liú Cǎichūn/リウ・ツァイチュン/りゅうさいしゅん)
唐代の歌妓で、民間歌謡の作者としても知られる。美貌と歌才で後世に名を伝えた。 - 崔鶯鶯(Cuī Yīngyīng/ツイ・インイン/さいおうおう)
元は唐代の伝説に登場する美女。後に『西廂記』のヒロインとして有名になり、美と恋愛の象徴となった。 - 梅妃(Méi Fēi/メイ・フェイ/ばいひ)
唐の玄宗の妃の一人。梅の花を好んだことから「梅妃」と呼ばれた。楊貴妃に寵愛を奪われた悲劇の美女。 - 韋昭容(Wéi Zhāoróng/ウェイ・ジャオロン/いしょうよう)
唐の皇帝に仕えた妃。美貌で知られ、宮廷の寵姫の一人だった。 - 韓娥(Hán É/ハン・アー/かんが)
唐代に伝わる歌女。美しい声と容姿で有名になり、彼女の歌は各地に広まった。
6. 宋から元にかけての美女たち―名妓と文化人としての女性
宋代から元代にかけては、宮廷だけでなく都市文化が発展し、芸妓や文化人としての女性が注目されました。李師師のように皇帝や文人に愛され、詩や逸話に登場する美女はその象徴です。この時代の女性たちは、文学・芸能・政治の交わる場で美と才を発揮しました。
- 李師師(Lǐ Shīshī/リー・シーシー/りしし)
北宋の名妓。徽宗皇帝や文人たちに愛され、芸と美貌で名を馳せた。『水滸伝』にも登場する。 - 張貴妃(Zhāng Guìfēi/ジャン・グイフェイ/ちょうきひ)
宋徽宗に愛された妃。美貌と才能で知られたが、徽宗の寵愛を巡る逸話が伝わる。 - 梁紅玉(Liáng Hóngyù/リャン・ホンユー/りょうこうぎょく)
南宋の武将韓世忠の妻。美貌に加え、戦場で太鼓を打ち敵を鼓舞した勇敢な女性として名高い。 - 朱淑真(Zhū Shūzhēn/ジュー・シュージェン/しゅしゅくしん)
南宋の女詩人。愛情を題材とした詩が多く、美貌と文才で知られた。 - 陳妙常(Chén Miàocháng/チェン・ミャオチャン/ちんみょうじょう)
南宋の名妓。詞や歌で名を残し、文化人たちと交流した美女。 - 唐婉(Táng Wǎn/タン・ワン/とうえん)
南宋の女詩人。陸游の従妹であり、悲恋の逸話「釵頭鳳」の主人公として有名。 - 邢娘(Xíng Niáng/シン・ニャン/けいじょう)
南宋の名妓。詞に優れ、その才色で多くの文人と交流した。 - 賈南風(Jiǎ Nánfēng/ジャー・ナンフォン/かなんぷう)
宋代ではなく西晋の人物だが、宋の文化において悪女として再評価された。ここでは文学に登場する美女像として紹介されることが多い。 - 竇娥(Dòu É/ドウ・アー/とうが)
元代の雑劇『竇娥冤』の主人公。美しいが悲劇的な女性として有名。 - 王月英(Wáng Yuèyīng/ワン・ユエイン/おうげつえい)
元代の名妓で、詩や歌に優れた才女。 - 朱買臣妻(Zhū Mǎichén Qī/ジュー・マイチェン・チー/しゅばいしんのつま)
元雑劇の題材に登場する女性。元は漢代の逸話に由来し、美しいが夫を見限ったことで有名。
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