3. 【神・神話・祭】
神々の存在や祭りごと、自然に宿る精霊など、日本の古層にある信仰世界を感じさせる語。日常と神域が重なり合う、聖と俗の境界に立つような言葉たちです。神聖さと畏怖が同居しています。
- 神(かみ)
自然や人間を超越した存在。八百万の神として、森羅万象に宿るとされた。 - 天津神(あまつかみ)
天上界に住む神々。高天原にいる神々で、日本神話の上位神たち。 - 国津神(くにつかみ)
地上の世界に住まう神々。土地の神・地方の神として親しまれた。 - 神無月(かんなづき)
10月。神々が出雲に集まるとされ、他の国には「神がいない月」。 - 出雲(いずも)
神々の集う地。神話の中心地であり、「神在月」とも呼ばれる場所。 - 天照大神(あまてらすおおみかみ)
太陽の神。日本の最高神として天皇家の祖とされる。 - 天岩戸(あまのいわと)
天照大神が隠れたとされる神話上の洞窟。世界が闇に包まれた伝説の場所。 - 八百万の神(やおよろずのかみ)
数えきれないほど多くの神々。自然・事物すべてに神が宿るという思想。 - 神籬(ひもろぎ)
神を迎えるための仮の宿り。榊などで囲まれた神聖な場所。 - 御霊(みたま)
神の魂。分霊して祭られることもあり、鎮魂や守護を意味する。 - 斎(いみ)
神聖な行いに際し、穢れを避けること。食や行動を慎む清めの行為。 - 禊(みそぎ)
身体や心を水で清める儀式。神に近づくための準備。 - 神事(しんじ)
神に捧げる儀式。舞・供物・祝詞を通じて神と交流する神聖な営み。 - 祝詞(のりと)
神に捧げる言葉。美しい言語で、祈願や感謝を表す。 - 神楽(かぐら)
神に奉納する舞楽。神話に基づいた演目で、神と人との橋渡しとなる。 - 祭祀(さいし)
神を祀る行為。豊穣や平安を願って行われた。 - 霊(ひ)
神の気配・力。火や風などの自然現象に宿ると考えられた。 - 神意(しんい)
神の心・意志。占いや夢で示されることもあった。 - 神罰(しんばつ)
神の怒りによってもたらされる災い。神を畏れる心が反映されている。 - 瑞兆(ずいちょう)
神の祝福を感じさせる良い前兆。自然の異変や夢にあらわれる。
4. 【幽玄・美意識】
言葉に尽くせぬ美しさ、心に深く響く情緒、静けさの中に漂う存在感──。和歌や能、禅の思想に通じる「幽玄」や「もののあはれ」など、日本独特の美意識を表す語を収めます。
- 幽玄(ゆうげん)
奥深くて言葉で語り尽くせない美。見えぬ気配に心を動かす感性。 - あはれ(哀れ)
心にしみる情感。人の心の動きやものの移ろいを深く感じる美意識。 - をかし
明るく興味深い美しさ。平安時代の貴族が好んだ、洗練された趣。 - しみじみ
静かに心の奥に響く様子。味わうような感情の深まり。 - 余情(よじょう)
語られたことの奥に広がる情感。あえて語らぬことが情緒を生む。 - もののあはれ
物事の無常さに触れたとき、自然と湧く哀しみや感動。 - いとど
いっそう、ますます、という意味ながら、感情の深まりにも用いられる語。 - さび(寂)
孤独や古びたものに感じる静かな味わい。後に「わびさび」の一部となる。 - わび(侘)
質素で不完全なものに宿る美。物寂しさの中の深い豊かさ。 - かすみ(霞)
春に立ちのぼるもや。見えるようで見えぬ、ぼんやりした美の象徴。 - うつろふ(移ろふ)
花や心が変化していくこと。はかなさと美しさが同居する表現。 - ひそか(密か)
誰にも知られず、こっそりと。人知れぬ想いの静けさと深さを表す。 - 静寂(せいじゃく)
音も気配もない静けさ。心を深く沈める時間と空間。 - こころばへ(心延へ)
心のありよう。思いやり、美意識、情趣などを含んだ豊かな意味。 - ほのか
かすかで不明瞭なもの。そこに感じる神秘や奥行き。 - 淡し(あはし)
色・味・感情が薄く、控えめで上品な美しさ。 - 雅(みやび)
優雅で洗練された趣。都人の美意識の象徴。 - 艶(えん)
色気、情趣、風情。恋心や色の移ろいに伴う美しさ。 - 栄枯(えいこ)
栄えることと枯れること。盛衰の流れに美を見出す思想。 - はかなき世
長くは続かぬこの世。だからこそ美しく、愛おしいという感覚。
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