雪が静かに降り積もる情景は、日本の冬を象徴する美しい瞬間のひとつです。その雪をめぐる言葉には、季節の変わり目の情感や自然の美しさを捉えた「雪の異称」が数多く存在します。ここでは、雪を表す繊細で美しい和の言葉を集め、それぞれの読み方と意味を添えて紹介します。六花から雪華、暮雪まで、雪にまつわる異称・美称を通して、和の心と自然の息吹を感じていただけるでしょう。
『雪』を表す美しい言葉
- 不香の花【ふきょうのはな】
香りを持たない花。 - 六つの花【むつのはな】
六つの花弁を持つ花。 - 六出【りくしゅつ】
六角形の雪の結晶を模した、六つの花弁を持つ花。 - 六花【りっか、ろっか】
雪の結晶の六角形を象った、六つの花弁を有する花。 - 六辺香【ろくへんこう】
六つの花弁をもつ花。 - 冬の花【ふゆのはな】
冬に咲く、または冬を連想させる花。 - 天花【てんか】
天から舞い降りるような美しい花。 - 寒花【かんか】
雪や氷を美しい冬の象徴として詠む。 - 牡丹雪【ぼたんゆき】
その大きさが牡丹の花を思わせるような雪。 - 玉屑【ぎょくせつ】
空から降る雪の一形態。 - 瑞花【ずいか】
縁起の良い、めでたい花、またはそうして雪を称える言葉。 - 白魔【はくま】
大雪を悪魔に例えて、その災害性を表す言葉。 - 花弁雪【はなびらゆき】
花びらのように大きく美しい雪。 - 銀花【ぎんか】
雪の美しさを讃える称呼。 - 雨雪【うせつ】
雪が降る様子、または雨と雪の混合。 - 雪の花【ゆきのはな】/雪の華【ゆきのはな】
雪を美しい花に喩えた言葉。 - 雪華【せつか】/雪花【せつか】
雪の結晶や降る雪の美しさを花に例えていう。 - 青女【せいじょ】
霜や雪をもたらすとされる女神。 - 風花【かざはな、かざばな】
晴れた日に風に乗って舞う雪のこと。 - かた雪【かたゆき】
積もって固まり、密度の高い雪。 - ざらめ雪【ざらめゆき】
一度融けて再び凍った、ざらざらした雪。 - しまり雪【しまりゆき】
細かい粒で固まりが良い雪。 - べた雪【べたゆき】
水分を多く含み、べたつく感じの雪。 - べと雪【べとゆき】
湿った粉雪とは対照的な、粘り気のある雪。 - 万年雪【まんねんゆき】
年中無休で消えない雪、特に山頂に見られる。 - 今朝の雪【けさのゆき】
立冬の日に降る雪。 - 六花【むつのはな】
結晶が六角形をしているためにつけられた、雪の呼び名。 - 冠雪【かむりゆき】
物の上に大きく積もり、形が松茸のようになった雪。 - 別れ雪【わかれゆき】/忘れ雪【わすれゆき】
冬の終わりに降る、春の訪れを告げる雪。 - 名残雪【なごりゆき】/名残の雪【なごりのゆき】
春が近づいてもなお残る雪、または春先に降る雪。 - 吹越【ふっこし】
風によって運ばれ、舞い降りる雪。 - 夜雪【やせつ】
夜間に降る雪。 - 大雪【おおゆき】
大量に降り積もる、激しい雪。 - 小米雪【こごめゆき】
非常に細かい、米粒のような雪。 - 小雪【こゆき】
わずかに降る雪、少量の雪。 - 斑【はだら】/はだれ
不均一に積もったり、溶け残ったりする雪のこと。 - 斑雪【はだらゆき/はだれゆき】
まだら模様のように降り積もった、または溶け残る雪。 - 新雪【しんせつ】
新しく降り積もった雪。 - 新雪【しんせつ】
最近に降ったばかりでまだ触れられていない雪。 - 明の雪【あけのゆき】
夜明けに降る雪。 - 暮雪【ぼせつ】
夕方に降る雪、夕暮れ時の雪景色。 - 根雪【ねゆき】
解けずに残る、下層の雪。 - 水雪【みずゆき】
水分を多く含んだ雪。 - 氷雪【こおりゆき】
雪が凍結し、氷のように硬くなった状態。 - 泡雪/沫雪【あわゆき】
溶けやすく、泡のような質感を持つ雪。 - 涅槃雪【ねはんゆき】/雪涅槃【ゆきねはん】
涅槃会(陰暦2月15日)前後に降る、涅槃を象徴する雪。 - 淡雪【あわゆき】
薄くて軽い、積雪の様子を表す。 - 深雪【みゆき】
深く積もった、厚い雪。 - 湿雪【しっせつ】
湿気を多く含み、重たい雪。 - 牡丹雪【ぼたんゆき】
大粒で柔らかい雪。 - 白雪【はくせつ】
純白な雪。 - 積雪【せきせつ】
地面に積もった雪の状態。 - 筒雪【つつゆき】
物にまとわりついて筒状になった雪。 - 篠の小吹雪【しののおぶき】
強風によって篠突くように散らばる雪。 - 粉雪【こなゆき】
細かくてさらさらとした雪。 - 粉雪【こなゆき】
細かくサラサラとした雪。 - 粒雪【つぶゆき】
粉雪よりもやや大きな粒の雪。 - 粗目雪【ざらめゆき】
大きな粒子を持ち、目に見える粒状の雪。 - 細雪【ささめゆき】
少量で、まばらに降る雪。 - 細雪【ささめゆき】
細かくまばらに降る雪。 - 綿雪【わたゆき】
綿のように軽く大きな雪片。 - 薄雪【うすゆき】
薄く積もる、ほのかな雪景色を作る雪。 - 衾雪【ふすまゆき】
一面に厚く覆われた雪。 - 赤雪【せきせつ】
表面に赤い藻が繁殖し、赤く見える雪。 - 里雪【さとゆき】
主に住宅地や平地に積もる雪。 - 雪の声【ゆきのこえ】
雪が窓や自然に触れる際に発する音。 - 雪の果【ゆきのはて】
春先、季節の変わり目に降る雪、あるいは春になっても溶け残る雪。 - 雪の花【ゆきのはな】
花のように美しいと評される雪。 - 雪国【ゆきぐに】
雪が多く降る地域。 - 雪庇【せっぴ】
傾斜面にできる、突き出た雪の層。 - 雪明り/雪明かり【ゆきあかり】
雪による反射で夜も明るく見える現象。 - 雪景色【ゆきげしき】
雪に覆われた景色、雪の景観。 - 雪月夜【ゆきずきよ、ゆきづきよ】
雪が降る月夜、雪と月明かりに照らされる夜。 - 雪片【せっぺん】
一片の雪、雪のひとひら。 - 雪空【ゆきぞら】
雪を予感させる空模様。 - 雪紐【ゆきひも】
物体に積もった雪が溶けて細長く垂れ下がる様子。 - 雪華【せっか】
雪の結晶や降る雪を花にたとえた呼称。 - 風花【かざはな/かざばな】
別の場所から風に運ばれてくる、舞い散る雪の現象。 - 餅雪【もちゆき】
柔らかくフワフワした感触の雪。
日本には、雪を美しく表現するための豊富な異称・美称が存在します。これらの言葉一つひとつに込められた情感や自然への敬愛は、和の文化の奥深さを物語っています。冬の季節になると自然から贈られる雪の美しさを、これらの言葉を通じて新たな視点から楽しむことができるでしょう。今回紹介した雪の異称・美称を日々の生活に取り入れて、和の心を感じる瞬間を増やしてみてはいかがでしょうか。
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